木工芸家が森に囲まれた工房で制作するというのは自然で美しい。彼は道南の厚沢部町の森のなかに住んでいる。針葉樹や広葉樹など美しい森の手入れをしながら木製のストリートオルガンを制作するのが仕事だ。郭公やオオルリ、フクロウたちの鳴き声、あるいは森の木々を揺らす風の音などを体感しながら制作する。だから彼のオルガンは風と小鳥たちの音がする。森のにおいがする。しかし彼は自分の手がけた森の木々を素材にしているわけではない。古い建物が解体されたときにでる廃材をいただき、それをオルガンに仕立て上げるのだ。建物に住み続けた人たちの幸福な笑い声も聞こえてくるようだ。